人間関係の心理のあれこれ

人間関係が怖いを楽にする方法についてつらつら綴っていきます。

褒めればよいとは限らない

ほめればだれでもやる気になるということを基礎とするモチベーション・マネジメントが教育場面でもビジネス場面でも盛んに取り入れられるようになってきました。


しかし、それははたして有効に機能しているのでしょうか。


実際には、何でもほめればよいというわけではありません。


ほめられることでモチベーションが下がるケースもあります。


では、ほめることが逆効果となるのはどんなときでしょうか。


重要なのは、なぜ褒められたかについての推測です。


たとえば、あきらかにたいした成果を出していないのにほめられたかについての推測です。


たとえば、あきらかにたいした成果を出していないのにほめられたとき、自分は期待されてないんだなと感じる人、バカにされてるようで嫌な感じがする人、自分は能力がないんじゃないかといった疑惑を抱く人などがいるはずです。


そこで注意したいのは、つぎのような点です。


まず第一の点ですが、難しい課題をこなせたときにほめられればモチベーションも高まるでしょうが、だれでもできそうな易しい課題をこなせたときにほめられると、自分の実力がよほど低く見られてるのではないかといった疑念が湧くこともあるでしょうし、とにかく何でもほめればいいと思ってるんだなと感じることもあるでしょう。


実際、易しい課題ができたときにほめられるとモチベーションが低下することが心理学実験でも示されています。


つぎに第二の点ですが、だれでも自分の実力や実績がどの程度なのかは何となく見当がつくものです。


ゆえに、人から褒められたとき、それが妥当なものかどうかを瞬時に判断しようとします。


その賞賛が妥当なものと感じられれば、素直に嬉しいし、モチベーションも上がりますが、妥当と感じられないときは、何だかすっきりせず、嫌な感じになります。


何か裏の意図があるに違いない、こっちをおだてれば思うように動くと考えているのではないかと疑うこともあるでしょう。


いずれにしても、このようなケースでは、モチベーションは上がりません。


さらに第三の点ですが、ほめるときは、ほめるべき望ましい成果や行動を具体的に指摘してほめるのが鉄則です。


あまりに一般化した褒め方では根拠が伝わらず、嘘っぽい感じになります。


パズルなどの課題を終えた後で、「あなたはほんとうに素晴らしい」と漠然と人物全体を褒められた子どもと、「ほんとうに一生懸命にパズルに取り組んでいたね」と具体的な行動や姿勢をほめられた子どもを比べた心理学実験によれば、その後課題に失敗したとき、後者はモチベーションを高く維持できたのに対して、前者はモチベーションを低下させました。


ここからわかるのは、具体的に褒めるべき点を指摘してほめることが大切だということと、具体的な取り組み姿勢をほめることが大切だということです。


最後に第四の点ですが、褒めることで自分の思うように動かそうとしているのではと感じるとモチベーションは下がります。


素晴らしい成績だとほめて具体的な成績の位置づけを知らせるフィードバック的な褒め言葉を受けた人のモチベーションは高まるのに対して、素晴らしい成績だから研究のデータとして使わせてほしいというような何らかの意図を感じさせる褒め言葉を受けた人のモチベーションは低下することが、心理学実験により示されています。


ほめれば都合よく使えるというような操作的な雰囲気が漂うのは逆効果という意味です。


ただし、関係性を重視する日本人では、「こんなに成果を出してくれると、ほんとにありがたい」「頑張ってくれて助かるよ」などといった、ある意味で操作的とも受け止められかねない褒め言葉によってモチベーションが高まるのが一般的だと考えられます。


これに関しては、アメリカなどの研究成果を鵜呑みにせず、文化差を考慮する必要があるでしょう。