人間関係の心理のあれこれ

人間関係が怖いを楽にする方法についてつらつら綴っていきます。

アダルトチルドレンの心性

ウォィティツは、アダルトチルドレンの心理的特徴を記載したが、その後にも臨床観察や統計学的手法から、その特徴を描き出そうとする研究者や実践家が数多くいる。
ただ、その特徴は、アダルトチルドレンの心理的特徴だけではなく、行動上の特徴であったり、情動の特徴であったりしている。
ここでは「症状」と呼ぶには躊躇するそれらの特徴を、まとめてアダルトチルドレンの心性と呼ぶことにする。


ベストセラーとなったウォィティツの『アダルトチルドレン・オブ・アルコホリックス』の二年後、1985年に『アダルトチルドレン・オブ・アルコホリックス・シンドローム』を刊行したクリッツバーグによると、アダルトチルドレンには次のような心性があるという。


アダルトチルドレンには、恐怖心、怒り、精神的な傷つき、恨み、邪推、孤独感、悲哀、屈辱感、自責感、無感動が認められる。
さらに、悉無律(オール・オア・ナン)形式による絶対的確信、情報不足、強迫的思考、優柔不断、学習の障害、混乱、過敏などがあり、危機志向型人生(クライシス・オリエンティッド・リビング)を送り、操作的行動、親密性の障害、楽しむことの困難、注目を引くための集団への参加などが見られるという。


またカーンの臨床的観察によるアダルトチルドレンの心性としては、内なる感情を同一化する能力の障害、危険に遭遇したときの経験不足、見捨てられ感情、親密性を育む障害、介入や変化への抵抗が認められるという。


また、コントロール群を設定したアダルトチルドレンの心性を研究した代表的なものに、1986年におこなったブラックらの研究があるが、それによると、依存、同一化の障害、感情表現の障害、親密性の障害、他人を信頼する力の障害などの特徴があるという。


さて、クリッツバーグにしろカーンにしろブラックにしろ、彼らが指摘したアダルトチルドレンの心性は、ある少女やその母親にも、すべてではないにしても認められた。
高校一年生のその少女は、表情を変えずに感情の表現を押さえて無感動に話をしていた。
他人とうまくやれずに、母親とも距離を置き、親密性の障害が認められ、また、「母は母でない」と言って、母を信頼する力がなかった。
また、自分もアダルトチルドレンであった母親は、「流されて生きている」と述べ、自己評価が低く、内なる感情を同一化する能力の障害があった。
そして、楽しむことの困難さや感情の表現が少なかった。


これらのアダルトチルドレンの心性は、クリッツバーグによると、後述するアルコール依存症家族の四つのルールに起因しているという。


またフリエルによると、その多くの部分が「否認」から生じているという。
酒を飲んで頼りにならない父、繰り返される両親の不和などの慢性的な「家族内トラウマ」からこころの防衛をするためには、子どもは自己を「分裂」(スプリッティング)させて、もうひとりの自分となって現実を「否認」するしかない。
その結果として、現実の日常だけではなく、内なる自己の感情も「否認」し、他人との親密性を拒否し、自己をコントロールしてしまう。


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分裂、価値感の切り上げや切り捨て、投影性同一化、否認などの「原始防衛」を大人になるまで用いつづけたり、慢性的な「見捨てられ感情」にさいなまれ、不安にさらされたり、抑うつになったり、共感されない人生を送る。
また自分の気持ちを抑圧するなどの「神経症性防衛」などを用いることもある。
それらの結果として「境界型人格障害」や「自己愛的人格障害」などの人格障害や、「不安神経症」や「強迫神経症」などの神経症、あるいは「嗜癖」などの「症状」を呈するアダルトチルドレンになっていく人もいる。