几帳面すぎて気持ちの整理がつかない
企業戦士Iさん(四十二歳)は、大手食品会社の研究開発部の課長である。
彼は、これまで食品加工技術の開発分野でめざましい業績を上げてきた。
あるとき、綿密な彼としては珍しく実験の手順を間違え、どうしても予想した値が得られないまま報告書提出の期限に迫られた。
そこで一部データを予想値に似せて捏造してしまった。
幸いにも、報告書提出後の再実験の結果、ほぼ同じ値が得られたのだが、良心的学究肌の彼はこのように姑息にとりつくろった自分が許せず、悶々とした日を送るようになった。
身体的にも頭痛、めまい、冷や汗、不眠などがあらわれ、近くの医院で受診した結果は高血圧症であった。
あれこれ治療を受けてもなかなかよくならず、クリニックを訪れた。
様々な話の果てに、彼は実験をめぐる不手際を初めて口にした。
ドクターのアドバイスもあって意を決した彼は数日後この秘め事を上司に打ち明けたところ、予想に反して日頃の苦労をねぎらわれ、慰められた。
以後Iさんは血圧ももとに復し、すっかり元気になって働いている。
「君子豹変す」という言葉がある。
君子のように見えた人が急に思いがけない俗悪な行動を見せる場合に用いられると思われているが、本来は「君子は自分が正しくないと知るとすぐに過ちを改めて善に移ることが際立って著しいこと」なのである。
潔癖、几帳面、責任感、強固な意志などは、企業の発展や個人の生活信条としてきわめて大きな役割を果たす。
一方でその強情な一面はちょっとした間違いを訂正できないで、雪ダルマ式にストレスレベルを高めてしまうことがある。
Iさんのように、直接の当事者には打ち明けにくいようなとき、第三者的なカウンセリングの場をもつことは問題解決の糸口をつかむことになる。
しかもこれは早いほど有効である。
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